波形メモリ音源についての最新情報、関連する画像や動画を紹介。(出典:Wikipedia)

波形メモリ音源(はけいメモリおんげん)は、ディジタル音源の基本方式の一つ。ウェーブメモリ音源と呼ばれることもある。

主に簡易音源の技術区分を目的とした分類であり、ディジタル楽器全般の音源分類には必ずしも適していない。 (⇒ シンセサイザーと波形メモリ技術)

目次

特徴

PSG音源とよく誤解されるが三角波・のこぎり波・正弦波に近い音も発音可能でPSGより音色の自由度が高い。

PCM音源に似た原理(構成)だがより単純で、一つの音色に使うメモリは平均32バイトと非常にローコストである。(多くは合計1Kバイト未満、一方PCMは数Mバイト超のものも存在する)しかも制御方法によってはPCM音源に近い発音をさせることも可能。

音が細かい矩形波で構成されている為、音程が低くなればなるほど模倣の元となった波形の音色との開きが出てくる。例えば正弦波を模倣した波形で低域を再生した際、正弦波本来の音よりも「プツプツ」というクリックノイズが目立つ現象が発生する。

ゲーム機用音源においてはVCF、すなわちフィルターパラメータやエンベロープ制御機能を伴わない為「時間的な音色変化の無いアナログシンセの簡易版」的音源として用いられる。ただし成熟期(スペースマンボウとそれ以降)には高速に波形を更新することで時間的な音色変化を実現している。また、制御する側で1周期ごとに波形を更新すればPCM音源のようにサンプリング音声を発声させることも可能。

ナムコの業務用ビデオゲームでは波形メモリ音源単独で使われていたが、他の環境(PCエンジンなど)では波形メモリ以外の音源、主にPSG、PAPU、ノイズジェネレータ等と組み合わせて使われている。

ゲーム機に搭載された主な波形メモリ音源

各音源のスペック

  • 波形メモリのサンプル数(1ループあたり)
    • 8~32 : WSGなど
    • 32 : SCCなど
    • 64 : FDS音源など
  • 波形メモリの量子化ビット数
    • 4 : N106など
    • 5 : PCエンジン、PC-FX
    • 6 : FDS音源など
    • 8 : SCCなど
  • 和音数
    • 1 : FDS音源など
    • 5 : SCCなど
    • 6 : PCエンジン、PC-FX
    • 最大8 : N106など

FDS音源(ファミコンディスクシステム音源)の特徴

ファミコンディスクシステムに採用されたFDS拡張音源(RP2C33に組み込み)は、 波形メモリを土台としながらも位相変調(Phase Modulation)による FM的な周波数の変調が可能(そのためFM音源の一種に数えられることがある)、 変調(PWM)により出力波形を生成、などの特徴があり、独特のサウンドを持つ。

波形メモリ音源を使った主なゲーム

その他の波形メモリ音源使用例

波形メモリ音源エミュレータ

その他各種ゲームマシン・PCエミュレータの一部に組み込まれている。また2009年以降はAdobe Flex3およびAdobe FlashCS4以降のダイナミックサウンド生成機能(ActionScript3拡張ライブラリの1つ)を用いた波形メモリ音源のエミュレートが可能[1]となっている。

シンセサイザーと波形メモリ技術

波形メモリ音源の核心となる波形メモリ技術は、ディジタル信号処理の基礎技術であり、1970年代から「ディジタル楽器全般に共通する基本要素技術の一つ」と認識されていた。 [2] [3]

ディジタル・シンセサイザーには、プレーンなディジタル楽器の要件に加え、下記の要件が加わる。

(1) 音色合成の操作・調整機能
(2) 音色の時間的変化

波形メモリ単独ではこれらの追加要件を実現しようがないため、歴史上いくつものシンセサイズ方式が登場した。

以降、「波形メモリ技術の使用」を基準とした電子楽器の音源分類を試みている。ディジタル音源方式の大半は、「波形メモリ音源」のバリエーションとして分類可能だが、一部、本質的に波形メモリと無関係な方式が存在する事を確認できる。(例えば変調合成)
※ 以下に示す過去製品の大半は、オークションや中古楽器屋/リサイクルショップ等で中古品を妥当な価格で入手して、マニュアルや機能を検証できる。(ただし レアなヴィンテージ機材(RMI,SCI,PPG,Fairlight等)、発売地域限定製品(OASYS PCI等)、最近の製品(OASYS等)等は除く)

波形メモリ技術を使わない音源方式

通常のアナログ音源全般

通常のアナログ音源には、ディジタル技術である「波形メモリ技術」は使用されていない。「波形メモリ技術」等のディジタル技術を併用したアナログ音源は、ハイブリッド音源として区別される。

分周回路を使った音源方式

  • 簡易電子楽器、簡易音源チップ:
    オシレータを分周し、得られた矩形波や簡単な合成波(階段状波形)をほぼそのまま出力するタイプの音源。
  • 電子オルガン (分周回路方式):
    12音階分のオシレータを分周し、得られた矩形波(FF分周の場合)や疑似正弦波(トランス分周の場合)を、アナログ・フィルタ他で加工して 音色(ストップ) として提供する。なおオルガンは、演奏者が複数の音色(ストップ)を重ねて音色表現する楽器なので、全体としては 加算合成を併用した減算合成 と言える。

理論上の合成方式

  • 倍音合成、FMシンセシス、PDシンセシス等:
    これらの合成方式は、理屈の上では波形メモリと無関係に処理方式を定義する事ができる。しかし実装上は、回路の簡素化と処理の効率化のために一種の波形メモリ(正弦波テーブル等)を使用するのが一般的である。

波形メモリ技術を使う音源方式

ハイブリッド音源

1. 波形を何らかの合成方式(典型的には加算合成)で生成し、波形メモリに格納して再生、音作りにはフィルターを併用する方式。初期のディジタルオルガン技術をディジタル・シンセサイザーに発展させる形で登場した。

  • RMI ハーモニック・シンセサイザー (1974)

2. オシレータ(DCO)に波形メモリを採用したシンセサイザー(主に減算合成)

KORG DW-8000
KORG DW-8000
倍音加算合成を鍵盤操作で指定 (後のCASIO SK-1も同機能をサポート)
  • KORG DW-6000 (1984) / DW-8000 (1985)
  • W:en:Ensoniq ESQ-1 (1986)

W:en:Wavetable Synthesis

PPG Wave 2.2 (1982)
PPG Wave 2.2 (1982)

波形テーブル上に1周期波形を複数並べ、キータッチや時間経過に応じて波形を順次切り替えて、音色変化を実現する方式。1980年W:en:Palm Products GmbHが採用し、後継のW:en:Waldorf Musicに引き継がれた。 なおPPG Wave 2.xには、複数のソフトウェア・エミュレーション [4] [5] が存在するので、音源の仕組みは簡単に実地確認できる。[6]

  • W:en:Palm Products GmbH Wavecomputer 340/380 (1979?)
  • W:en:Palm Products GmbH Wavecomputer 360 (1980)
  • W:en:Palm Products GmbH Wave 2.0 (1981)
  • W:en:Waldorf Music microwave (1989)

なおPC用サウンドカード製品には「ウェーブテーブル音源」という名称を用いる製品が多いが、これらはサンプリング音源/PCM音源の別名に過ぎず、PPG/Waldorfの「ウェーブテーブル・シンセシス方式」とは無関係である [7]


[補足] 英語版記事「W:en:Wavetable synthesis」との整合性

  • W:en:Additive synthesisとの関連性 [8]: ウェーブテーブル・シンセシスが「実時間加算合成」の効率的な実装方法として登場したのはおそらく事実だが、現在では加算合成は理想的な合成方式と認識されていないので、ここでは省略する。
  • W:en:Frequency modulation synthesisとの比較 [9]: 現在一般に入手できるFM音源製品は、ウェーブテーブル・シンセシスとの共通点がほとんど無いため、ここでは紹介していない。
ベクトルシンセシスの基本アイデア
ベクトルシンセシスの基本アイデア
KORG WAVESTATION の  ウェーブ・シーケンス機能
KORG WAVESTATION の
  ウェーブ・シーケンス機能

W:en:Vector Synthesis / ウェーブ・シーケンス

2次元平面を直交座標で4つの領域に分け波形を割り当てて、例えばジョイスティックエンベロープ・ジェネレータの時間変化に沿って座標を更新し、4つの波形の混合比を変える一種の加算合成。SCIのDave Smithが開発し、SCIやKORGの製品が採用した他、KAWAIやYAMAHAも類似した音源を発売している。

なおこの音源の観点では、ウェーブテーブル・シンセシスは1次元座標軸上の移動として説明され、両者は類似したシンセサイズ方式とされるが、実際には (1)加算合成の有無、(2)潜在的に生成可能な波形のバリエーション、に相違がある。

Fairlight CMI
Fairlight CMI

サンプラー / PCM音源 (サンプリング音源、ウェーブテーブル音源)

1980年前後に、半導体メモリー価格の低下に伴い数十KB以上のROMやRAMの使用が現実的になると、1周期単位の波形ではなく数十ms~秒単位のサンプルを丸ごと使う サンプラーPCMドラムマシンが製品化された。

サンプルの使用で音のリアリティは格段に向上したが、初期の製品は楽器としての表現力が充分とは言えなかった。 そこで、更に数十倍のメモリを使って細かなレイヤーで表現力を高めたり、

  • W:en:Kurzweil Music Systems W:en:Kurzweil K250 (1983)
Ensoniq Mirage
Ensoniq Mirage

さらに減算合成方式(アナログ~ディジタル)を併用して表現力の拡大を図って、現在一般にPCM音源と呼ばれる多少複雑な音源方式が確立した。

  • W:en:E-mu Emulator II (1984)
  • W:en:Ensoniq Mirage (1985)
  • W:en:Roland D-50 (LA音源、1987)

90年代半ば以降、MIDI音源搭載サウンドカードの主流となった「ウェーブテーブル音源」とは、実際はサンプリング音源/PCM音源の別名に過ぎない。

GRAVIS GF1
GRAVIS GF1
  • W:en:Gravis UltraSound
サンプルを入替え可能な音源を搭載して一躍脚光を浴びたサウンドカードで、Trackerソフトを低負荷で安定動作させるのに重宝された。使用している音源チップGravis GF1は Forte TechnologiesとAdvanced Gravisの共同開発とされているが、その出自はEnsoniqのシンセ用チップ OTTO (ES5506)だと言われている。
  • W:en:Trackerソフト: 1987年Amiga上に登場した数値シーケンサ。Amiga標準のサンプル音源を使い、任意のサンプルを組み合わせた完成度の高いトラックを作成できる特徴を持つ。(参考: MOD (ファイルフォーマット))
  • Creative Technology W:en:Creative Wave Blaster
「Wave Blasterポート」搭載サウンドカードに対応したドーターボード形式の拡張音源。同ポートは事実上の業界標準となり、各社から YAMAHA XG、Roland GM/GS、KORG M1、Waldorf microwave XTable、Kurzweil MA-1 といった各種規格/方式の音源や、ドーターボードを搭載可能なシンセ/MIDIコントローラも登場した。
Sound Blaster AWE32
Sound Blaster AWE32
SB AWE64
SB AWE64
  • Creative Technology W:en:Sound Blaster AWE32 / W:en:Wave Blaster (1994)
1993年同社が買収したW:en:E-mu systemsのサンプル音源(減算合成併用)を縮小した音源チップEMU8000を搭載した製品。同音源のデータ形式は「サウンドフォント規格」として一般公開され何度かのバージョンアップを経て、現在では多くのソフト音源/ソフト・サンプラーで利用可能になっている。
  • Creative Technology W:en:Sound Blaster AWE64 / WaveSynth (1996)
AWE32に ソフトウェア・シンセ WaveSynth を追加し 64ボイス同時発音可能にした製品。WaveSynthは、スタンフォード大CCRMAのライセンスに基づく物理モデル音源(ウェーブガイド・シンセシス方式)で、そのソフト開発担当はSeer Systemsのデイヴ・スミス (プロフェット5設計者)だった事が知られている。

その他

以下は、通常は波形メモリ音源とは見なされないが、波形メモリ技術の汎用性故に、動作原理や実装を「波形メモリの操作」として説明可能な音源である。

YAMAHA DX7
YAMAHA DX7

FMシンセシスとPDシンセシスは、位相角変調の応用技術であり、その他のリング・モジュレータやPWMと合わせて、変調合成として広く分類できる。

FMシンセシス


FMシンセシス出力 (周波数スペクトル)

2op FMの構成要素

1980年代にYAMAHAの製品で広く知られるようになったディジタルFMシンセシスは、YAMAHAの実装では「波形メモリ出力で、別の波形メモリを読み出す処理」として実現しており、波形メモリの応用音源と考える事が可能である。

この処理は、アナログシンセ上では クロス・モジュレーション(オシレータ間モジュレーション) として知られており、波形メモリ処理が合成方式の本質ではない事が判る。FMシンセシスの出力(周波数スペクトル)の解釈には周波数変調の概念が援用されるので、一般には周波数変調を本質とするシンセサイズ方式だと考えられている。

FM音源製品のオペレータの波形テーブルには、一般には正弦波(もしくは余弦波)が搭載されている。後期には、波形テーブル読み替えでサイン波以外の波形も選択可能な製品が登場した。

後に登場した RCM音源 (YAMAHA)では、「サンプリング変調」と呼ばれる PCM波形でFM音源オペレータを変調する機能も提供された。

PDシンセシス


PDシンセシスの概要

1980年代にカシオが開発したPDシンセシスは、「波形メモリの読み出し位相角を歪ませて(読み出し速度を波形周期内で変更)、倍音を変化させる方式」と説明する事ができる。

類似した処理としては、アナログシンセ上の W:en:Oscillator sync(一つのオシレータで別のオシレータを周期的にリセットし、結果的に波形を変形する方式) を挙げる事ができる。

脚注

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波形メモリ音源