マニュアルトランスミッションについての最新情報、関連する画像や動画を紹介。(出典:Wikipedia)

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マニュアルトランスミッションManual transmissionMT)とは自動車オートバイ鉄道車両などに採用されている変速機の一種である。この項では自動車のマニュアルトランスミッションについて述べる。

目次

概要

BMWミニのシフトノブ
BMWミニのシフトノブ

マニュアルトランスミッションは狭義では単体の機械である。広義にはクラッチ機構および手の動きをマニュアルトランスミッションへ伝えるシフトレバー機構を含み、運転者の操作対象や自動車の運転方法を指す場合がある。マニュアルトランスミッションは対向した歯車(ギア)の組み合わせによって定まる歯車比にその特徴を見い出すことができ、一般的には変速段数と同じ数のギアの組を持つ。これに対し自動変速機(オートマチックトランスミッション)は遊星歯車機構の動作を切替えることで減速比の変更を実現しており、変速段数とギアの組み(遊星歯車機構)の数は一致しない。オートマチックトランスミッションが開発され普及した結果、対語として旧来の手動変速機がマニュアルトランスミッションと称されるようになった。日本ではギアマニュアルミッションと俗称されることも多い。イギリス英語ではマニュアル・ギアボックスとも呼ばれるシフトレバーの配置は5速フロア式が主流だが、インパネ式やコラム式もある。

2007年度の国内販売台数におけるMT方式のシェアは3%未満でこそあるが、大型車や作業用車両・スポーツタイプなどを中心にその技術は産業界とコアユーザに強く支持されている。

種類

マニュアルトランスミッションは、シンクロメッシュ機構の有無によって大きく2種類に分けられる。シンクロメッシュ機構とは、ギア組み合わせ変更の際の速度同調機構である。シンクロメッシュ機構をもたないタイプでは、運転者が変速段間のギア回転速度差を調整する必要がある。これは選択摺動式と常時かみ合い式に分けることができる。シンクロメッシュ機構が一般化した現在では、これらの2仕様をひとくくりにした「ノンシンクロ」という呼び方も用いられる。開発普及の順はノンシンクロ型選択摺動式、ノンシンクロ型常時かみ合い式、シンクロメッシュ機構付き常時かみ合い式である。

自動車に搭載されるマニュアルトランスミッションの大半は、運転者が随時、任意のギア段に飛び越して変速することを可能としている。他方、オートバイに多く見られるものやレース仕様の自動車に見られるマニュアルトランスミッションでは1段階ずつしか変速することができないものが多い。その変速パターンを指し後者を特にシーケンシャル・マニュアルトランスミッションと呼ぶことがある。

ノンシンクロ型トランスミッション

最も初期の自動車に搭載されたマニュアルトランスミッションは、シンクロメッシュ機構をもたない変速機であった。もちろん走行中に変速することができたし、後進用ギアも装備していた。しかしギアの選択はギア自体をスライドさせて噛み合わせる選択摺動式か単純なドグクラッチの噛み合いで行う常時かみ合い式でありギアチェンジの際にはタイミングの良いギア抜き/入れ操作、変速中のデリケートなアクセルとクラッチ操作が要求された。そうしないとうまくギアが噛みあわなかったのである。

より高速のギア段に変速しようとする時、次のギアの回転速度に適するように動力の伝わっているギアの回転速度を減速させなければならない。これはクラッチを切った時に自然と実現されることではあるが、スムーズにギアを繋ぐにはシフトレバーの振動および音によりギアがきちんとかみ合ったことを感知しなければならずこの操作には経験と熟練を要する。またより低速のギアに変速しようとする場合には動力のかかっているギアを加速させなければならないため、クラッチを繋いだままにしておくことが必要だった。このとき一度ニュートラルに変速した上でギアを加速し改めて目的のギアに入れるという、いわゆるダブルクラッチを行わなければならない場合もあった。実際のところ、このようなノンシンクロ型トランスミッションにおいてはクラッチを全く使わないで変速する方が簡単であった。その場合にはクラッチは車両静止状態から動き出すときにのみ使用されることになる。この操作方法は、ノンシンクロ型トランスミッションを搭載するレース用車で現在でも一般的に用いられている。

現在市販される乗用車のマニュアルトランスミッションは例外なくシンクロメッシュ機構付きであるが、大型車両や建設機械では俗に「クラッシュボックス」とよばれるノンシンクロ型トランスミッションを今でも採用している事例がある。これにはいくつかの理由がある。まずシンクロメッシュ機構の摩擦材は摩擦相手の鋼製ギア自体の摩耗を防ぐために鋼より柔らかい真鍮を主とする合金で作られており、定期的に分解交換が必要である。そしてシンクロメッシュ機構をなくすことで部品点数が減り、構造が単純になることで強度が上がりコストが下がるとともに信頼性も増す。

これらに加え、レース用車両では変速に要する時間がシンクロメッシュ機構付きトランスミッションよりもノンシンクロ型トランスミッションの方が速い場合もある。これに準じ、スポーツタイプの市販車両に搭載するトランスミッションの改良競争においてはシンクロメッシュ機構のうち半分のドグの耐久性を犠牲にすることで変速を速くし「シフトフィール」を向上させることが行なわれる場合がある。

シンクロ型トランスミッション

現代のトランスミッションは「常時噛み合い式」が主流である。これは全てのギアが常に噛み合っており、選択摺動式のようにギアの噛み合わせ変更を行なう必要がなく噛み合ったひと組のギアだけが軸に固定され、それ以外のギアは自由に回転するようになっている。この機構で、変速に要する技量は大幅に減った。

最近の自動車ではシンクロメッシュ機構を全く使うことなく常時噛み合い式トランスミッションを構築することができるにもかかわらず、変速時の振動や騒音(いわゆる変速ショック)を嫌うことから、シンクロメッシュ機構付きのトランスミッションが使われている。常時噛み合い式トランスミッションでは各変速段用の歯車対は常に噛み合い回転しているが、歯車は取り付けられた軸とは固定されておらず必要な歯車だけが軸に結合するようになっている。

歯車と軸の結合は、軸に付いたクラッチスリーブ(以後スリーブと略す)によって行なわれる。スリーブは横方向にスライドすることができ、その内面に付いた歯(ドグ)によって外周に歯を持つ二つのリング(一方がギア側、もう一方は軸側)を接続するようになっている。通常1つのスリーブは2つのギアと軸との結合を受け持つ。一方向にスライドするとある歯車が、逆方向にスライドすると別の歯車と軸が結合する。2つのリングがスリーブにより接続、そのギアが軸と固定されるとトランスミッションの出力スピードが決まる。

シンクロ型トランスミッションではギアが接続される時にそのギアのスピードを軸のスピードに正しく合わせるためにまずスリーブがギアに取り付けられた円錐形のクラッチ(シンクロコーンとシンクロリングからなる)に力を伝え、このクラッチが回転を同期させ同期終了迄シンクロリング(ブロッカーリングまたはボークリングとも呼ばれる)によりスリーブが固定位置手前でブロックされる構造となっている。

シフトレバーはリンケージによって常に一つだけのギアだけが軸と結合するようスリーブを操作している。すなわち変速時スリーブはまず一つのギアから離れ、それから別のギアに結合するのである。従って、運転者はギヤ自体を動かしているのではなくスリーブを動かしていることになる。現代のトランスミッションではこれらの部品の動きは極めてスムーズで高速なので、操縦者がそれを知覚することはほとんどない。

最初のシンクロ型トランスミッションは、1929年キャディラックに搭載されている[要出典]。現代的なコーン型のシンクロメッシュ機構はポルシェにより改良が進められ、1952年ポルシェ・356に搭載された。その後何年にも渡って、コーン型シンクロメッシュ機構は「ポルシェ型」と呼ばれることとなった。

1950年代初期、大部分の自動車ではシンクロメッシュ機構1つと簡単なリンケージで済む2速/3速のみシンクロ機構付のトランスミッションを搭載しており当時の運転者マニュアルでは2速から1速へシフトする必要がある時は一旦完全に停止し、それから1速にシフトして再発進するのが最良と書かれていた。

しかし機械の絶え間ない改善により1960年代には3速、そしてその後1速、4速、5速、6速などのフルシンクロメッシュ型トランスミッションが一般的となっている。一方、後退ギアは通常シンクロメッシュ機構を持たない。通常の自動車のトランスミッションでは後退ギアは1段だけであり、後退走行中に変速の必要はないからである。

ちなみにシンクロメッシュが完全に働かず、ギア鳴りを起こすことを「シンクロが弱い」と言う。現在の日本車でもスバルの軽自動車(TM57型、TY64型などスバル内製トランスミッション)やスズキの自動車[要出典]で、3速から2速へのシフトダウンを行ったときに稀に見られる。

内部構造

シャフト

ほかのトランスミッションと同様に、マニュアルトランスミッションもさまざまなギアやシンクロメッシュ機構などの部品が取り付けられた幾つかのシャフト(軸)を持っている。後輪駆動のトランスミッションの場合、普通は3つのシャフトを持っている。それぞれインプットシャフト、カウンターシャフト、そしてアウトプットシャフトである。カウンターシャフトはインターミディエイトシャフトとも言う。

後輪駆動のトランスミッションではインプットシャフトとアウトプットシャフトは同一直線上にあり、実際にはトランスミッション内部で組み合わさり一本のシャフト状になっている場合が多い。この複合シャフトはメインシャフトと呼ばれる。この入力端と出力端は一方が中空になっており、もう一方のシャフトがその中へ入り込みベアリングで支えられているため独立して別々な速度で回転できる。カウンターシャフトに対してメインシャフトを指す場合、これらの構成全体ではなくインプットシャフト側だけまたはアウトプットシャフト側だけを指す場合がある。

一部のトランスミッションのメインシャフトはインプットシャフトとアウトプットシャフトを互いにロックし1:1のギア比になり、カウンターシャフトを経ずに力を伝達することができる。このとき、メインシャフトはあたかも一本のシャフトのように振舞う。この状態を直結駆動という。また、この状態のギア段を「トップギア」と称する(1:1を越えて増速するギア段は、旧くは「オーバートップ(和製英語)」、現代では「オーバードライブ(OD)」と呼ぶ)。

一般的にトランスミッションのインプットシャフトは、カウンターシャフトを回すただ一個のピニオンギア以外何も付いていない。カウンターシャフトには変速段数に応じた数のギアが搭載され、インプットシャフトが回転すればそれに連れて回転する。これらのギアは、前進段と後進段に対応している。アウトプットシャフトについている各前進ギアは、そのシャフトに堅固につながっているわけではない。アウトプットシャフトはギアの中を通っているがギアの中心孔にはベアリングが付いているので、ギアはアウトプットシャフトとは独立して回転できる。後進段は通常はこれとは異なる構成になっている(後述)。

大部分の前輪駆動車のトランスミッションは、これとは異なる設計になっている。まず、最終減速機構を含む差動装置 (ディファレンシャル)を内蔵する。また、シャフトはインプットシャフトとカウンターシャフトの2つしかない。このときのカウンターシャフトはアウトプットシャフトと呼ばれることもある。インプットシャフトはトランスミッションの全長を貫いており、カウンターシャフトを直接回転させる独立したピニオンギアは存在しない。2番目のシャフト(カウンターまたはアウトプット)の出力端にピニオンギアがあり、差動装置のリングギア(最終減速機構)に接続している。

前輪駆動、後輪駆動のトランスミッションはどちらも似た動作で動く。トランスミッションがニュートラルでクラッチが繋がっているときはインプットシャフトとカウンターシャフトはクラッチ経由でエンジンにより回転され、アウトプットシャフトは駆動輪によって回転される。トランスミッションがニュートラルでクラッチを切っている間はクラッチプレートに繋がったインプットシャフトとカウンターシャフトは慣性で回転し続け、アウトプットシャフトは駆動輪にて回転される。この状態ではエンジン、クラッチおよびインプットシャフトおよびカウンターシャフト、アウトプットシャフトおよび駆動輪の3体はいずれも独立して回転する。トランスミッションでギアが選ばれておりクラッチを切った場合は駆動輪によってアウトプットシャフト、カウンターシャフト、インプットシャフト、クラッチプレートの順に回転力が伝わる。

ドグ・クラッチ

詳細は「ドグミッション」を参照

シンクロメッシュ機構

シンクロメッシュ機構はシンクロナイザーとも呼ばれる。クラッチスリーブのドグ歯がギア側ドグ歯と接続する際、お互いが異なるスピードで回転しているとその歯は噛み合うことができず歯同士がぶつかり大きな音が発生する(いわゆるギア鳴り)。このために、現代の自動車のドグクラッチは同期機構を有している。この機構は歯が接続する前に「シンクロコーン」部の発生する摩擦トルクによりスリーブとギアの回転速度を合わせ、回転同期が終了する迄ブロッカーリング(またはボークリングとも言う)に働くトルクによりスリーブの移動をブロックし歯同士が接触しないようにしている。同期が終了するとブロッカーリングに働く摩擦トルクは解除され、回転方向にわずかに動くことによってクラッチスリーブが歯と接続できる様に位相が合う仕組みである。シンクロナイザーの詳しい設計はメーカーによって異なる。

変速時にシンクロナイザーに作用するモーメントは入力軸とクラッチ・ディスクの回転慣性であるが、クラッチを完全に切らないで変速を行なった場合はこれにエンジンの駆動力も加わることになりシンクロナイザーの負荷は著しく増大する。このような操作はシンクロコーン部に余分な磨耗を引き起こし、寿命低下の原因となる。運転者がシンクロ付きトランスミッションで「回転数を一致させ」クラッチを使用せずに無理やりギアを入れた時、自分が上手く回転を合わせてギアを入れられたように感じるが実際には大部分シンクロナイザーによって回転合わせが行なわれておりトランスミッションに余計なダメージを与えている。

後進ギア

前段までの説明は前進ギアについてであるが、後進ギアの構成は通常は異なる。トランスミッションのコストを下げるために、以下のような構成になっている。

後進もひと組のギアである。一つはカウンターシャフト、もう一つはアウトプットシャフトにある。前進のギアはすべて常に互いに噛み合っているが後進ギアはカウンターシャフト、アウトプットシャフトにそれぞれ固定されており通常は噛み合っていない。後進が選択されるとリバースアイドラーと呼ばれる小さなギアがその二つのギアの間に滑りこみカウンター→アイドラー→アウトプットと動力を伝達、間に1枚のギアが入るため回転方向が逆になる仕組みとなっている。このため、後進段選択時にアウトプットシャフト/カウンターシャフトが回転しているとアイドラーギアをスムーズにかみ合わせることができない。車が前進しているときに後退ギアにシフトしようとすると、ガリガリとギア鳴りを起こすのはこれが原因である。またカウンターシャフトの回転時も同様の現象が起こるため、回転を止めるためのブレーキを装備しているトランスミッションもある。運転者は自動車を停止させそれから後退ギアを選択することとなるが、その際にトランスミッションの内部のブレーキ機構がシャフトを止めアイドラーの挿入を容易にするのである。

この方法で構成された後進ギアは、大きなうなり音を出す。これは前進ギアの歯は軸に対して斜めに切られている斜歯歯車を使用しているのに対し、後進ギアはアイドラーギアが滑りこむことを考慮し歯が軸に対して平行な平歯車を使用しているからである。斜歯歯車は機構的に複数の歯が同時に噛み合い噛み合い状態の変化が少ないため、騒音の原因となるような振動が発生しにくい。しかし平歯車では同時に噛み合う歯は原理的に1つであるため、回転につれて噛み合い状態が変化(噛み合い位置が歯先〜歯元で変化)することにより歯のたわみ等による振動が発生する。後退ギア走行で聞かれる特有のうなり音はこの振動が原因である。

後進ギアを平歯車で設計することはいくつかの妥協(低い強度、シンクロなしで噛みあわせること、および大きな雑音)の産物であることは明らかであるが、自動車の後進の使用頻度やその負荷(後退時エンジン最大出力を使うような機会は滅多にない)から問題ないものと考えられている。トランスミッションによっては後進段にも前進段と同様にドッグクラッチ、シンクロナイザーを使用したものがあるがギア自体は平歯車のままの場合が多い。

設計のバリエーション

さまざまなギア

マニュアルトランスミッションはしばしば4、5あるいは6段、一部の車両は7、8段の前進ギアを備えている。ほぼすべての場合で後進ギアはひとつである。3段あるいは4段の速度トランスミッションではほとんどの場合、最高のギアは直接駆動、つまりギア比が1:1である。5速以上のトランスミッションについては最も高いギアは通常オーバードライブギアであり、ギア比は1:1未満である。古い自動車は3速トランスミッションを装備するのが一般的だったが高性能モデルでは4速トランスミッション、最も洗練された自動車では5速トランスミッションを装備していた。

5速トランスミッションはトヨタによって開拓され、1970年代には安価な量産車や軽トラックさえに現われ始めた(トヨタは各々のモデル名に接尾辞SR5を付けることによりそれが5速を持っていることを宣伝した)。今日では、量産車向けのマニュアルトランスミッションは事実上すべて5速であるが6速トランスミッションが1990年代の初めに高性能車に出現し始め最近では一部の高効率車および従来の乗用車にも広がってきており、さほど珍しいものでもなくなってきている。

外部オーバードライブ

前進3段または4段しかなかった初期のモデルでは燃費がいい高速巡航のためのオーバードライブ比率が不足しており、これを補うためにしばしばレバーかシフトレバーに組み込まれたボタンにより別途作動する後部ハウジング中に置かれた別のオーバードライブ・ユニットが組み込まれていた。

軸とギアの構成

入力軸は、必ずしも副軸を回転させるピニオンを回すわけではない。ギアを入力軸そのものにマウントし、副軸に付いたギアと噛み合わせる方式もある。この場合、副軸が出力軸を回す。言いかえれば、駆動されるギアや駆動するギアをどの軸に載せるかは設計に依存する。

さらに、シフターの配分もまた設計の問題である。セレクターをもつ自由に回転するギアが一つの軸にあり、永久にスプラインで固定されたギアが別の軸にある必要は必ずしもない。例えば5速トランスミッションは1速から2速に変速するセレクターを副軸に置き、3速4速から5速に変速するセレクターを主軸に置くこともできる(これは1998年のホンダ・シビックの配置である)。これは自動車が止まり入力軸を回転させたままクラッチを切ってニュートラルでアイドリングした場合、3速、4速および5速のギアペアが回転しないことを意味する。

一部のトランスミッションの設計(例えばボルボ850およびV/S70シリーズ)では実際に2つの副軸が存在し、両方とも前輪駆動軸のリングギアと噛み合って出力軸のピニオンを稼動させる。こうすると4つのギアと2シフターを持つ従来の副軸に比べてそれぞれの副軸がわずか半分の長さで済むので、トランスミッションをより狭く設計することを可能になる。

クラッチ

トランスミッションを使っているすべての乗り物(ほとんどすべての近代的な車)で、必要なときにエンジンとトランスミッションを切り離すためのカップリング装置が用いられる。マニュアルトランスミッションではクラッチがこの役割を担う。クラッチがなければエンジンとタイヤはいつも複雑にリンクされ、そして車を停止させるたびにエンジンも止めなければならないだろう。さらに、クラッチなしでギアを変えることは車がすでに動いている状態でさえ非常に難しくなる。トランスミッションに動力がかかっている間にギアの選択を切るにはかなり大きな力を必要とし、そしてギアを選択するにはエンジンの回転スピードを車スピードと望んだギアに依存する非常に正確な値に維持しなけれなばらない。自動車ではクラッチは通常ペダルによって操作される。一方、オートバイではハンドルの左側に付いたレバーがこの役割を担う。

クラッチペダルが完全に踏み込まれているときクラッチは完全に外れ、トルクがエンジンからトランスミッションまでさらにエクステンションから先にある駆動輪へ伝達されなくなる。この状態で、ギアを選択したり自動車を止めることができる。クラッチペダルが完全に放されたときクラッチは完全に接続し、そして本質的にエンジンのトルクのすべてが転送される。この状態ではクラッチはスリップせず、どちらかと言うと堅いカップリングのように振る舞い力が最小の損失で車輪に伝達される。

これらの両極端の中間は半クラッチと呼ばれ、クラッチはさまざまな程度にスリップする。クラッチがスリップするとき、クラッチはエンジンクランクシャフトとトランスミッションのインプットの間のスピードが異なるにもかかわらずトルクを伝達する。トルクが摩擦によって伝達されるので、多くの力が熱として無駄に捨てられる。車を発進させるときにスリップを利用する。またギアを変更するとき、エンジン回転数はスリップによって新たに選択されたギア比率に合わせて滑らかに同調される。その結果、衝撃のない滑らかなギア変更が可能になる。

スリップしているクラッチは熱を生み出すため、長い間スリップしたままにすることはできない。さらにエネルギーが無駄になっているのであるから、スリップは望ましくないとも言える。

極めて熟練したモトクロスやオフロードオートバイの乗り手はコーナーを出るとき、エンジンが最高の出力を得られる回転数になるようにクラッチを「叩く」あるいは「煽る」ことがある。

オートマチック車では、エンジンとトランスミッションを分離するためにトルクコンバータが使われる。

クラッチスタートシステム

詳細は「クラッチスタートシステム」を参照

マニュアルトランスミッションの適応と普及

乗用車

現在では多くのタイプの自動車にオートマチックトランスミッションが採用されている。マニュアルトランスミッションは比較的安くて効率的であるから、かつては小型の低価格車は主にマニュアルトランスミッションを使っているがそれらの多くはオプションとしてオートマチック装備を選ぶこともできた。また低価格車はしばしば非常に小さいエンジンで動力を供給しているので以前のオートマチック車ではトルクコンバーターのパワーロスがあるが、マニュアル車なら同じエンジンの動力を効率的に使用出来る(トルクコンバーターも初期のものに比べたら現在の伝達効率は格段に上がっている)。

スポーツカーオフロード車などエンジンの性能を効率よく引き出す必要がある車ではマニュアルトランスミッションが多く採用される。ただその後無段変速機とオートマチックトランスミッションの普及・性能向上に押され、このような乗用車ではスポーツカーでもマニュアルトランスミッション(狭義の3ペダルのもの)は数を減らしつつある。

アメリカではマニュアルトランスミッションは人気がなく、アメリカで販売されるファミリーカーにはオートマチックが標準で取り付けられている。日本では1980年代後半まで、狭義のMT(クラッチペダルを持つ手動変速機構)は四輪車や二輪車の変速機構の主流であった。1990年代以降、一般的な乗用車についてはオートマチック限定免許の創設などの影響からオートマチックトランスミッション(AT)への移行が進みMTはスポーツモデルや一部の廉価グレードを中心に残るのみである。日本の大半の車種はオートマチック車とマニュアル車が併売され、マニュアルトランスミッションが基本装備でオートマチックがオプション扱いになっていた。しかし近年ではオートマチックのみで生産することを前提とし、マニュアルトランスミッションが用意されていない車種も多い。ほとんどの高級車種では、オートマチックトランスミッションだけが入手可能である。現在もMTが主流の欧州車でも、日本へ輸入されるものにはMTが設定されていないものが多い。また、DSGなどのトルクコンバーターを使わないATを搭載した車種も増えている。

一方、ヨーロッパとアジア(日本を除く)ではほとんどの自動車がマニュアルトランスミッション装備で販売される。ヨーロッパでも最近はATが増えつつあるが欧州自動車製造協会(ACEA)の調査によると、マニュアルトランスミッション車はヨーロッパでは90%と圧倒的な比率を占める(2004年)。アメリカや日本ではレンタカーのような一部用途の自動車はほとんど例外なくオートマチックトランスミッションが搭載されているが、ヨーロッパでは正反対である。そのため国内メーカー製でも、国内仕様車にはMTの設定がないが輸出用や国外生産分には設定している車種が多い。

イギリスアイルランドドイツスウェーデンおよび日本のような一部の国では運転手がオートマチックトランスミッションを使って運転免許の路上試験を受けるとその結果発行される免許証はオートマチックに限定されている。従って、無制限の運転免許証を取得することを望む人々は追加の講習(日本では限定解除審査と呼ばれる)を受ける必要がある。

営業用自動車

トラックバスなどの大型車では車体や荷物などの重量が大きいためや運転手は運転に熟練した職業運転手であること、そしてビジネス用途でなにより重視されるコスト面から車両価格や燃費という点で依然マニュアルトランスミッションが主流である。特に営業車は自家用車に比べて走行距離が長く、燃費の差が運行コストに重大な影響を与えることになる。しかし、普通免許で運転できる小型のトラックやライトバン(おおよそ1トン積み以下)で配送業務のアルバイトホームセンターの貸し出しトラックなどではATへの移行が進んでいる。また大型トラックであったとしてもクラッチのみを自動化、またはトランスミッションはマニュアルトランスミッションのままで操作をオートマチックトランスミッションとした(手動変速から自動変速へ)非トルクコンバーター式オートマチックトランスミッション(三菱自動車INOMATなど)が長距離トラックを中心に広まっている。長距離運転するドライバーの疲労を軽減するのが目的である。

また、大型バスやトラックでも一部にATしかない車種が存在する。以下はその一例。

また、タクシーでも近年までMTが主流であった。冬の北日本でも、雪道でFRのMT車を駆る運転手をよく見かける。しかし近年のAT主流化の波に勝てず二種免許のAT限定が認められたこともあり、タクシーでもATが増えてきている。もはや大都市圏でMTのタクシーを見ることは稀である(ただし大都市そのものの中。首都圏であっても、茨城県群馬県等では圧倒的にコラムシフトMT車である)。また、都会ではAT限定の二種免許を持った若い運転手も現れているという。

二輪車

二輪車では四輪車以上に趣味性が強いためか、50ccスクーターを除きほとんどがクラッチレバーを持つMTであった。しかし1990年代後半以降、いわゆるビッグスクーターの人気が高まり250ccクラスまでは販売台数の大半がAT車となった。それにともない、2005年には普通二輪免許(小型限定も含む)と大型二輪免許にAT限定が新設された。250ccを超えるクラスでもAT車の販売比率は徐々に増加している。

なお二輪車の場合はマニュアルトランスミッションと言っても、自動車と違ってほぼ全てがドグミッションである。

軍用車

軍用車両は信頼性や耐久性、保守性が求められるためマニュアルトランスミッションが搭載されてきたがアメリカ合衆国においては徴兵制度もあいまってまた日本においてはオートマチック限定免許に代表されるようにオートマチック車が事実上の標準になった事情があり、軍用車両へもオートマチックトランスミッションを導入する必要があった。

当初は燃費が悪い、パワーが出ないなどの苦情も出ていたがそれを改善しようとメーカーが努力しこのことはオートマチックトランスミッションの耐入力向上(高出力エンジン対応)や耐久性、信頼性の向上に寄与した。

また,大型トラックや特殊車両などの場合,マニュアルトランスミッションでは操作に習熟した者でないと発進すら困難な場合があるが,オートマチックトランスミッションでは自動車の運転ができる者ならある程度運転することは可能であり,小型車両においても片手片脚を負傷した状態でも運転可能となる。そのため,常に人員の損耗や負傷に備えねばならない軍隊ではオートマチック化はメリットともなる。

保守

クラッチはエンジンとトランスミッションの間でトルクの伝達を調整するために摩擦力を使うため、クラッチは毎日の使用で磨耗を受けている。整備された非常に良質のクラッチが熟練した運転手によって使われる場合、何十万kmも走ることができる。弱いクラッチ、ダウンシフティング、ギアオイルを長期間交換しなかった場合、未熟な運転者および乱暴な運転は修理あるいは取り換え頻度の増加の原因になる。

マニュアルトランスミッションはギアオイルで潤滑されている。ギアオイルはオートマチック車におけるオートマチックフルードほどの頻度ではないが、定期的に交換しなければならない自動車もある(一部の製造業者は、トランスミッションの修理や漏れの補充を除いてはギアオイルの交換は断じて不要であると明示している)。FF車の場合はギアオイルがLSDのオイルも兼ねていることが多く、1万km以下など交換頻度は格段に高くなる。

同じ歯幅で多くのトルクを伝達でき小型軽量化につながる、また平歯車で出易い、かみ合い騒音が少ない等のメリットによりマニュアルトランスミッションでは主に斜歯歯車が用いられている。この斜歯歯車での歯面の滑りや大トルク伝達時の歯面の圧力で油膜が切れるのを防ぐため、ギアオイルには硫黄やリン、亜鉛等からなる極圧添加剤と呼ばれる化合物が添加されており特有の匂いがある。

一部の製造業者ではギアオイルにこれらの添加物を使わず最近までは通常のエンジンオイルを指定していたが、現在ではエンジンオイルの強化バージョンであるらしい自社ブランドのギアオイルを指定している。

二輪車のクラッチの大半はエンジンオイルに浸されている湿式クラッチである。これは通常エンジンの下半分とトランスミッションを分離するものがなく、同じオイルがエンジンとトランスミッションの両方を潤滑する。そのため四輪用エンジンオイルや一部のオイル添加剤を使用するとクラッチ滑りを起こす可能性があるので、極力二輪用エンジンオイルを使用することが望ましい。

ATとの比較

最近の車(普通免許で運転可能な乗用車や小型貨物自動車)に装備されるマニュアルトランスミッションは、一般的には5ないし6段階の前進用ギアおよび1段階の後進用ギアで構成される。多いものでは前進7段階変速・後進2段階というものがみられる。オートマチックトランスミッション車や他のマニュアルトランスミッション車と区別する時には、しばしば前進用ギアの数を例えば「マニュアル5速」「5速マニュアル」「5MT」と表示することがある。対照的に、5段階変速のオートマチックトランスミッションは「オートマ5速」「5速オートマ」「5AT」などと表示される。自動車に主に応用されている変速機としては、このほか上述のオートマチックトランスミッションセミオートマチックトランスミッション、および無段変速機などがある。

乗用車の場合、一般的なトルクコンバータを採用したオートマチックトランスミッション(AT)と比較した場合、

  • 介在する機械的な要素が少ないため、レスポンスが良く車両やエンジンの挙動を把握し易い。また、パワーロスも少ない。近年ではマニュアルモード付きのAT(セミオートマチックトランスミッション)やCVTが多数出回っているが、それらとは全く違うダイレクト感が得られる。ただし主観によるものであるために異論も多い。
  • 同じ車で比較した場合、ATの方がトランスミッションが大型であるためMT仕様の方が車重が軽量である。
  • 駐車場内での低速での移動を行う時、AT車はクリープをフットブレーキで調整するのに対しMT車は半クラッチでアクセルを調整しながらふかすという手法を取る。このためブレーキとアクセルペダルを間違えた時、AT車の方が破滅的結果を招く可能性が非常に高い《検証》事故はなぜ起こったか
  • バッテリーが上がりセルモーターでのエンジン始動が不能になった場合、押しがけや引きがけ[1]によるエンジンの始動が可能である。
  • 踏切内でのエンジン故障などの緊急時にエンジンが始動しない場合に、ギアを入れたままセルモーターを回すことによって短距離であれば移動が出来る。ただし、上記のクラッチスタートシステムを使用できないように改造しているか、そもそも搭載していない車種に限定され、最近の車にはほとんどこの手法は使えない。
  • 発進の際にクラッチを切ってギアを投入する。という作業が必ず存在するのでアイドリングストップ機構を組み込みやすい。したがって、アイドリングストップ装置や負荷が大きい貨物車などでもパラレル型ハイブリッドを容易に構成することが出来る。

上記のようにATに対して様々な利点があるが最近はATの多段化や高性能化、無段変速機の出現、DSGツインクラッチSSTと言ったトルクコンバーターを使わないATの出現と普及により絶対的ではなくなっている。

また近年では、AT車が主流となり以下のような状態が発生している。

  • 乗用車ではクラッチ操作が要らないATのほうが楽に運転できることや、1990年代以降はオートマチック限定免許が普及したことなどから、ATへの需要シフトによってMTが一部の趣味的な用途の車と位置付けられ、その結果、ほとんどの乗用車にMTも用意されている車種は激減した。逆にMTのみの運転経験しかない者にはAT車のクリープ現象は非常に危険に感じることがあり、己の意思でエンジンと駆動軸を切り離せるクラッチがないことは精神的負担となる場合もある。
  • かつては同一車種の同一グレードで比較した場合AT車はMT車と比較して割高なことが多かったが、AT車の普及により価格差が少なくなった。車種によってはMT車とAT車の価格差がない場合もある(例:ダイハツ・コペン)。またフィットのRSの場合、多少の装備差はあるもののMT車のほうがAT(CVT)車より20万円以上高く設定された時期があった[2]
  • 新しいATの普及によって、効率上の優位が少なくなっている場合がある。
    • 例を挙げるとギャランフォルティスの燃費はATは13.6km/L、5MTは13.2km/L[3]。しかも車体重量はATの方が30kg程重い。

多くの場合、操作にはクラッチ操作も伴われることから操作には機構(メカニズム)への理解と多少の習熟を要求されるため子供のいたずら等による暴走の危険性が少なく安全性が高いとされる。その一方で、過去には停車時にローギア(1速)や後退にギアを入れて駐停車した[4]ことを忘れたまま[5]クラッチを完全に踏まずに始動させてしまったり、始動前からエアコンのスイッチをONにしている等[6]して車両を暴走させてしまい物損事故や人身事故を招くという事例も発生している。

そして良くも悪くも運転者の技量が反映されやすくギアチェンジやクラッチワークの違いにより乗り心地や加速力、燃費、クラッチプレートやトランスミッションの寿命などが運転者によって変動しやすい。

また、高齢世代の人や寒冷地(非常に寒い地域ではエンジンの温度が一定まで上がらないと停止することがある)では起動の瞬間にエンジンの回転数を上げてエンストを防ぐためアクセルも同時に踏みながらエンジンを始動させる人も少なくはない。そのため1999年7月以降より新車で販売されているMT車にはクラッチを踏まないとエンジンがかからないクラッチスタートシステムの採用が義務付けられている(1999年6月以前に新車で販売された車は採用されていないものが多い)。また起動の際には必ず、パーキングブレーキをかけた状態でクラッチを確実に踏み込んでからエンジンをスタートするようにすれば大半の事故は防ぐことが可能である。近年はAT車同様、クラッチ・パーキングブレーキに加えフットブレーキも踏み込んでエンジンを始動するように教習所等で指導されるようになった。ただしフットブレーキも併用してエンジンをスタートさせる場合、1985年ごろのブレーキ倍力装置普及初期の自動車はセルモータの負担になって始動できないことがあり特に古い車種の場合は車両付属の説明書等をよく読んで確認する必要がある。なお、近年の車種ならばほとんど問題はない。

“マニュアルモード”という表記が与える誤解

オートマチックトランスミッション採用の自動車カタログに「マニュアルモード付き○速トランスミッション」や「マニュアルモードパドルシフト/ステアシフト」といった表記がなされることがある。これらはあたかもクラッチをなくしたマニュアルトランスミッションであるかのようにも思われるが、実際はトルクコンバータ式オートマチックトランスミッションもしくはCVTのギア選択を手動で[7]もできるようになっているだけである。したがって、これらのトランスミッションの特性はオートマチックトランスミッションと同じである。

またフォルクスワーゲングループのDSGや三菱自動車のSSTに関してはトルクコンバータがないが、DレンジでATとほぼ変わりなく走ることが出来る、マニュアルモードでも手動ギア変速の際はセレクトレバーやパドルの入力が直にトランスミッションを制御するわけではなくコンピューターを介して制御される「バイ・ワイヤ」式であるためオートマチックトランスミッションの部類に入る。

MT車独特の操作方法

日本国内で販売されている車種のMT設定例(2010年3月現在)

参考までに、現在日本国内で新車で販売されている自家用車の例である。

★のMT車は全グレードで、☆のMT車は特定のグレードで6速を採用。なお、軽自動車で6速MTを採用している車種はない。

また三菱自動車はかつて6速MTを採用している車種があったが、現行車種では存在しない。トヨタ自動車はオーリスのRSで量産車での6速MTが復活した。

トヨタ自動車
日産自動車
本田技研工業
マツダ
三菱自動車工業
富士重工業
比較的MT車比率が高いとされているスバルでもMT車は削減傾向である。スポーツモデルの代名詞であるインプレッサのWRX・STIにもAT専用モデルが誕生した。また、レガシィは2009年度のフルモデルチェンジでターボ車の一部グレードに限定された。
スズキ
ダイハツ工業
輸入車

出典と脚注

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関連項目

マニュアルトランスミッション

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