翼平面形についての最新情報、関連する画像や動画を紹介。(出典:Wikipedia)

航空機の主翼の形状(薄緑の部分)左からテーパー翼(XP-51) 後進翼(F-100) 前進翼(X-29) デルタ翼(F-102) 可変翼(F-111) 斜め翼(AD-1)
航空機の主翼の形状(薄緑の部分)
左からテーパー翼XP-51
後進翼F-100
前進翼X-29
デルタ翼F-102
可変翼F-111
斜め翼(AD-1)

翼平面形(よくへいめんけい)とは、を真上から見た形状のこと。翼に言及していることが明らかな文脈では単に平面形ともいう。この項では、主に航空機の主翼の翼平面形について解説する。

目次

代表的な主翼平面形

矩形翼

矩形翼のウルトラライトプレーン。
矩形翼のウルトラライトプレーン。

平面形が単純な長方形である翼。第一次世界大戦ごろまでの複葉機に多かった。現代では、構造が簡単で製造しやすいことから、廉価な小型機にしばしば適用される。矩形翼は、失速状態付近において翼付け根に近いところから翼上面の流れが剥離し始める傾向がある。これにより、翼端付近に設けられているエルロン上の気流は翼全体が失速するまで剥離せず、最後まで操縦が可能となるので利点といえる。一方、欠点としては同質量の楕円翼やテーパー翼(後述)に比べ揚抗比が悪いことや、同一翼面積のテーパー翼に比べて翼根にかかるモーメントが大きく補強に余分な質量が必要となることなどが挙げられる。

楕円翼

楕円翼の平面形を見せるスピットファイア。
楕円翼の平面形を見せるスピットファイア

翼弦長の翼幅に対する変化が楕円曲線に従うような平面形。厳密な楕円形である必要は無い。翼端で発生する翼端渦に起因する誘導抵抗は、理論的には楕円翼において最小になるため、かつては楕円翼が採用されることがあった。楕円翼のこの効果は、適切な比率に設計されたテーパー翼(後述)で大差無く実現可能とされている。曲線形状の翼は生産性に劣ったりコストが増大したりするため、現在では楕円翼はほとんど採用されない。第二次世界大戦ごろの航空機に多くみられ、スピットファイアハインケル He 111、そのハインケルと技術提携していた愛知航空機九九式艦上爆撃機などが楕円翼を採用していた。

テーパー翼

B-24の主翼はテーパー翼。
B-24の主翼はテーパー翼。

翼端に行くに従い翼弦長が線形に変化(一般には減少)する翼平面形状をテーパー翼と呼び、直線先細翼とも呼ばれる。構造重量、構造強度、揚力分布、製造効率の観点から、楕円翼に代替する翼平面形状として広く適用されている。失速状態に近付くと、翼端から流れが剥離する特性がある。揚力に起因する翼付け根に掛かるモーメントを減少させるのに都合が良く、たとえば、海鳥の平面形は楕円翼ではなくテーパー翼となっている。

逆テーパー翼

XF-91は逆テーパー翼。
XF-91は逆テーパー翼。

翼端にいくほど翼弦長が減少するのが一般的なテーパー翼とは逆に、翼端の翼弦長が大きくなる翼。アメリカの試作戦闘機XF-91は後退翼の低速度域での翼端失速を対策するために逆テーパー翼を用いて試作された。

デルタ翼

アヴロ ヴァルカンのデルタ翼。
アヴロ ヴァルカンのデルタ翼。

ギリシャ文字のΔ(デルタ)と似た平面型を持つ翼をデルタ翼(三角翼)と呼ぶ。低アスペクト比、低速域での実用性を考慮すると一般的に低翼面荷重、低速巡航時は低揚抗比となりやすい。翼厚に対して翼弦が長く前縁後退角を大きくしても構造強度が高く取れることから一般には高亜音速から超音速飛行に向く。大迎え角時には翼上面に大規模な渦が発生し、大きな抗力と引き替えに大揚力を得ることが可能である。

また主翼の前後幅が大きいため、無尾翼機形式に向いている(主翼の断面をS字型に設計し後縁部分でマイナスの揚力を発生して水平尾翼の代替とする)。水平尾翼を廃すればそれによりさらに抗力も減少し、機体をコンパクトにまとめる事ができる。

水平尾翼つき形式としてはA-4MiG-21、無尾翼機としてはミラージュIIIF-102等、かつて盛んに採用された。

ダブルデルタ(後述)、オージー(後述)、クリップトデルタ(台形)などへと発展していった。現代ではカナード(先尾翼)と組み合わせたクロースカップルドデルタとしてグリペンラファールユーロファイター タイフーンなど欧州の最先端機に取り入れられている。

ダブルデルタ翼

発射を待つスペースシャトル。ダブルデルタ翼がわかる。
発射を待つスペースシャトル。ダブルデルタ翼がわかる。

主翼の内側の前縁後退角度と、外側の前縁後退角度に差異があり、内側の前縁後退角を大きく、外側を小さくしたデルタ翼をダブルデルタ翼と呼ぶ。動作としてはストレーキと全く同等であり、主翼付け根部分の前後方向の長さを大きく取ることで、大迎角時に渦を発生させる効果がある。この渦を主翼部分に当てる事で、大迎角時における翼上面の気流の剥離を抑えるものである[1]

スウェーデンの戦闘機 SAAB JA35 ドラケンが初めて実用化した。他にはスペースシャトルオービタ(無尾翼ダブルデルタ)、Tu-144カナード付きダブルデルタ)などの例がある。

ただしビゲンのように、外側の前縁後退角度を大きくし、内側の前縁後退角を小さくしたものも、少ないながら存在する。一般的なダブルデルタ翼の場合と違ってストレーキと同等の効果はなく、その形態の導入理由は様々である(ビゲンの場合は、比較的大型のカナードを装備するため、主翼とあまり重ならないように設計したためである)。

書籍によっては、大小二つの前縁後退角によって低速から高速まで幅広く対応するといった解説がなされているものがあるが、正確とは言えない。後述の後退翼の解説の通り、翼の前縁の後退角は臨界マッハ数を高めるためのものであり、後退角を変えたからといって低速から高速に幅広く対応できるというものではない。可変翼は後退角変化によって低速から高速に対応しているが、これは低速時に翼幅荷重を小さくするためである。

オージー翼

コンコルドのオージー翼。
コンコルドのオージー翼。

オージー翼はデルタ翼の前縁がへこんだ曲線を持つものをいう。コンコルドが採用した翼平面形である。デルタ翼の低速・大迎角時における特性を改善するために用いられる。

後退角効果

後退翼

Me 262の図面
Me 262の図面

翼を左右にまっすぐ伸ばすのではなく、後退角か前進角を持たせることで、翼上面に超音速領域が生ずるマッハ数(臨界マッハ数)を高めることができる。後退角は翼弦長の25%をつないだ線と機体の左右軸とのなす角度で定義される。

後退角をつけると、翼型に平行な方向を流れる空気の速さは、理論上、機体の速さに後退角の余弦を乗じた程度に減少させることができる。その分衝撃波の発生を遅らせることができ高亜音速~遷音速領域での抵抗減少に役立つ。ただし、実際の現象から経験則を導き出すと、翼型に平行な方向を流れる空気の速さは、機体の速さに後退角の余弦の平方根を乗じた程度となることが判っている。

また安定性の面から見ると、後退角には上反角と同様の効果がある。そのため直線翼と同等の上反角をつけると復元性が強くなりすぎる。それを防ぐために後退翼を使用する場合は上反角を小さくするか、場合によっては下反角をつける必要がある。

後退翼には以下のような欠点もある。

  1. 構造や強度の面で直線翼よりも難しくなること
  2. 同質量の翼で比較すると、後退角がつく分翼幅が短くなってアスペクト比が低下し、揚抗比も悪化すること
  3. 速度の低い領域で翼端失速などを起こしやすくなること
  4. 翼端失速が生じた時、機体全体の揚力の着力点が前方に移動することにより縦安定性が変化し、最悪縦不安定状態になること

前述のデルタ翼やその派生平面形は、テーパー翼を後退させただけの後退翼に比べ、1. の構造や強度の点で優れている。2. の例としては、 ボーイングのジェット旅客機727等の古い機種よりも767等の新しい機種の方が後退角が小さいことが挙げられる。翼型の改良等により高速飛行中の抗力を増大させることなく後退角を減少させ、アスペクト比を増して揚抗比を上げることで効率(燃費)を向上させている。

後退翼は基本的には亜音速、超音速飛行する機体のための翼形ではあるが、DC-3旅客機など、レシプロ機時代にも既に採用例が存在する。これは下方視界の確保のためや、翼の揚力の中心と機体重心と機体の構造の兼ね合いなど、空気力学的な観点とは別の理由によって後退翼になった。第二次世界大戦当時のドイツのMe 262ジェット戦闘機も、搭載エンジンの変更に対する機体重心の調整から後退翼が採用され、偶然にもそれが亜音速域での性能向上に役立つ事が判明した。以降ドイツで研究され、戦後は諸外国で継承され、1940年代末から本格的な採用が始まる。

また無尾翼機でも後退翼の採用例が見られる。主翼の一部でマイナスの揚力を発生し水平尾翼の代替とする場合、主翼のプラスの揚力を発生する部分とマイナスの揚力を発生する部分が前後しないと、機体のバランスは保てない。そのため後退翼形式を採用する事になる。ただしこの形式の無尾翼機は黎明期には見られたものの、前述の通りその後はデルタ翼形式が多い。

前進翼

X-29の三面図
X-29の三面図

後ろでなく前へと角度を付けることでも後退翼と類似の効果を得ることができ、これは前進翼と呼ばれる。前進翼には以下のような特徴がある。

  1. 翼の根元あるいは機体の重心位置で失速が始まっても、まだ翼端には気流が残っているため、後退翼と比較して、原理的に失速限界が高い。
  2. 後退翼とは逆に負の上反角効果となって、ロール方向に対して本質的に不安定となる。
  3. 揚力と迎え角が相互に増加しつづけ、ついにはある速度で翼を破壊してしまうダイヴァージェンス(発散)という現象が起き、これに耐えうる翼構造は重量が大きくなりすぎる。
  4. ステルス性が低い。

上記のうち2については、不安定である事は逆に言えば運動性を高める(可能な機動が多くなる)事となり、特にドッグファイトを行うタイプの戦闘機においてはむしろ利点となり得る。第二次世界大戦で活躍した中島飛行機製日本陸軍戦闘機(九七式戦闘機一式戦闘機二式単座戦闘機四式戦闘機)のテーパー翼は、前縁は直線であるものの、後縁にはわずかに前進角を持っている。これらは前進翼的な効果を狙ったものであり、前進翼の先駆者とも言える。ただし3の欠点が最大の障害であり、本格的な前進翼は実現は困難だった。

しかし、複合材料技術の発達に伴い、空力弾性テーラリングと呼ばれる成形技術を利用することで重量増加ペナルティを小さく留める事が可能になり、実現への技術的障害は無くなった。また1970年代以降においてフライ・バイ・ワイヤが実用化した事により、不安定な機体を制御して飛行させることで、戦闘機の運動性向上に利用する(CCV技術)ようになり、その手法のひとつとして前進翼は有効な方法だと考えられた。

その結果生まれたのが、NASAの実験機X-29である。他にロシアのスホーイがプライベート・ベンチャーで開発した、Su-47も前進翼を採用している。しかし近年の軍用機設計では、むしろステルス性が重視されるようになったため、前進翼を採用した軍用機の実用化は、現在まで実現していない。

民間機としてはHFB 320 ハンザジェットがあり、数少ない前進翼の実用例である。欠点は多いもののビジネスジェットの先駆けであり、一部は旧西ドイツ空軍でも使用された。ただしこれは飛行性能を求めたものではなく、主翼の桁を後方にずらす事でキャビンの容積を大きくするための採用だった[2]

ほか、複座の練習用グライダーでよく使われ、特にLET社のL-13型が良く知られる。

可変翼

飛行中のB-1。
飛行中のB-1
主翼を後退させた状態のB-1。上の画像よりも飛行速度が大きいと推測できる。
主翼を後退させた状態のB-1。上の画像よりも飛行速度が大きいと推測できる。
F-14の主翼の可動範囲
F-14の主翼の可動範囲

詳細は可変翼参照

高速飛行時や加速時には翼幅を小さくし抵抗を減少させ、離着陸時や低速巡航時は翼幅を大きく取り揚力や揚抗比を高める手段として、付け根を軸として左右の各主翼を前後に動かせるような機構を備える機体がある。

可変後退翼や可変平面形(VG; Variable Geometry)翼などと呼ばれるこのシステムは固定翼に比べて大きなコストが掛かり、可変翼の機構で機体の重量が増加するうえ、メンテナンス性に劣るため、軍用機以外での採用はほとんどない。そもそも可変後退翼が必要となる超音速機が、民間機にはほとんど存在しない。超音速旅客機としてボーイング2707の開発で構想されていたことがあったが、1971年に計画が中止された。

ベルX-5F-14トーネードMiG-23MiG-27Su-17Tu-160B-1などが知られる。

可変後退翼と呼ばれる事もあるが、可変翼の可変機能はあくまで翼幅を変化させる目的であり、後退角の変化はそのための手段に過ぎないので、誤解を招く表現である。翼の後退角は臨界マッハ数を高めるための手法であり、その目的で可変翼を用いるなら遷音速時に後退角度を最適に変化させるべきであるが、そのような可変翼は存在しない。

斜め翼

NASAドライデン飛行試験センターで飛行試験されるAD-1。前進/後退角は最大の60度。
NASAドライデン飛行試験センターで飛行試験されるAD-1。前進/後退角は最大の60度。

可変翼の一種に斜め翼(oblique wing = オブリーク翼とも)がある。これは主翼全体を中心の一点を軸として斜めにある程度回転させるもので、左右の片側は後退翼・もう一方は前進翼となる。

かつてNASAがAD-1 (航空機)NASA AD-1(エイムズ(Ames)ドライデン(Dryden)-1)という実験機で飛行試験を行った(写真。#外部リンク参照)。

脚注

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関連項目

外部リンク

翼平面形