広津和郎についての最新情報、関連する画像や動画を紹介。(出典:Wikipedia)

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広津 和郎(ひろつ かずお、男性、1891年12月5日 - 1968年9月21日)は、日本小説家文芸評論家翻訳家である。

目次

略歴・人物

硯友社の小説家広津柳浪(その父は明治初期に日朝交渉を担当した外交官・広津弘信である)と旗本西国郡代である蒲池鎮克の孫娘だった蒲池須美の次男として東京に生まれる。

府立一中に落ちたが、数学の不出来だけで試験を放棄してしまった。麻布中学校在学中から、新聞や雑誌に投稿して、ときには賞金をもらうこともあった。早稲田大学に進学し、谷崎精二と知り合う。父は流行作家ではなかったので、収入も少なく、和郎はこのころから翻訳などで原稿料を稼ぐようになっていた。1912年、葛西善蔵らとともに、同人雑誌『奇蹟』を創刊、谷崎精二も加わったがまもなく廃刊した。1913年、大学卒業後、新聞社に勤めるなどしながら、翻訳や評論を書く。この頃、宇野浩二と知り合う。1917年に発表した「神経病時代」で、小説家として認められる。好景気の時代の悩むインテリ青年の苦悩を描き、新しい時代を予感させた。社会のなかの小説の位置についての考察を深め、1924年には「散文芸術の位置」というエッセイを書いた。

プロレタリア文学の流行した時代には、直接その流れには加わらなかったが、〈同伴者作家〉と呼ばれたように、『風雨強かるべし』(1933年 - 1934年)のような社会の現実をみつめる作品を書いた。また、戦争の危機を感じた時代には、〈散文精神〉を唱え、時流に流されないありようを訴えた。

戦時中に熱海に疎開し、そのまま戦後も熱海に住み、同じように一時期熱海に住んでいた志賀直哉と親交を結んだ。

戦後は、アルベール・カミュの『異邦人』が紹介されると、感心しないといって中村光夫と「カミュ論争」を展開した。

戦後の活動として特筆されるのが、松川事件の被告の支援である。被告たちの文集『真実は壁を透して』を読み、事件に関心を抱き始め、宇野浩二とともに仙台高等裁判所まで第二審の傍聴に出かけもした。第二審でも被告たちが有罪判決を受けたために、裁判記録の検討を始め、その成果を『松川裁判』(1958年)として刊行し、最高裁での公正な裁判の実施を訴えた。1963年の全員無罪の確定まで活動を続け、その結果を含めて『松川事件と裁判』(1964年)にまとめた。

広津和郎墓所
広津和郎墓所

長い文学的生活をまとめるかのように、晩年は回想的作品に力を注ぎ、『年月のあしおと』(1961年 - 1963年)、『続年月のあしおと』(1964年 - 1967年)の回想記は高く評価され、野間文芸賞毎日出版文化賞を受賞した。

娘の広津桃子も作家となり、柳浪・和郎・桃子と三代にわたる作家業となった。

墓所は東京都台東区谷中霊園

著書

  • 神経病時代 新潮社 1918(新進作家叢書)のち岩波文庫
  • 二人の不幸者 新潮社 1918
  • ストリンドベルグ評伝 春陽堂 1919(泰西文豪評伝叢書)
  • 握手 天佑社 1919
  • 明るみへ 新潮社 1919
  • 横田の恋 春陽堂 1920(新興文芸叢書)
  • 作者の感想 聚英閣 1920
  • 朝の影 聚英閣 1920
  • お光と千鶴子 金星堂 1921
  • 死児を抱いて 金星堂 1922(金星堂名作叢書)
  • ひとりの部屋 新潮社 1925(短篇シリイズ)
  • 現代短篇小説選集 1 少女 文芸日本社 1925
  • 秋の一夜 改造社 1926
  • 生きて行く 戯曲集 改造社 1927
  • 薄暮の都会 大森書房 1929
  • 女給 小夜子の巻 中央公論社 1931
  • 女給君代 中央公論社 1932
  • 六大学リーグ戦史 / 芦田公平共著 誠文堂 1932
  • 過去 岡倉書房 1934
  • 小説作法講義 万昇堂 1934
  • 昭和初年のインテリ作家 改造社 1934(文芸復興叢書)
  • 風雨強かるべし 改造社 1934 のち角川文庫、岩波文庫、新日本文庫
  • 一時期 黎明社 1935
  • 青春行路 三笠書房 1935
  • 母は護る 三笠書房 1938
  • 青麦 学芸社 1939
  • 巷の歴史 中央公論社 1940
  • 愛と死と 牧野書店 1940
  • 芸術の味 全国書房 1942
  • 父と子 報国社 1942
  • 若き日 報国社 1943 のち岩波文庫
  • 夢殿礼讃 全国書房 1946
  • 美しき樹海 民友社 1946
  • 女の敵 新生社 1947
  • 動物小品 創芸社 1947
  • 大和路 鎌倉文庫 1947
  • 散文精神について 評論集 新生社 1947
  • 別離 全国書房 1948
  • 冬の芽 大日本雄弁会講談社 1949
  • 狂った季節 六興出版社 1950
  • 若い人達 中央公論社 1950
  • 同時代の作家たち 文藝春秋新社 1951 のち新潮文庫、角川文庫、新編で岩波文庫
  • 壁の風景画 創芸社 1951
  • 広津和郎著作集 第1-2 乾元社 1952-1953
  • ひさとその女友達 角川文庫 1954
  • 泉へのみち 朝日新聞社 1954 のち角川文庫、新日本文庫
  • 誘蛾灯 朝日新聞社 1955
  • 松川裁判 第1-3 筑摩書房 1955-1958 のち中公文庫
  • 美しき隣人 宝文館 1957
  • 小磯家の姉妹 角川書店 1957
  • 自由と責任についての考察 中央公論社 1958
  • 広津和郎著作集 全6巻 東洋文化協会 1959
  • 松川事件のうちそと 光書房 1959
  • 松川裁判の問題点 中央公論社 1959
  • 街はそよ風 中央公論社 1960
  • 年月のあしおと 〈正・続〉 講談社 1963-1967、講談社文庫、同文芸文庫全4冊
  • 松川事件と裁判 検察官の論理 岩波書店 1964
  • 広津和郎初期文芸評論 洪水以後時代・作者の感想 講談社 1965
  • 広津和郎全集 〈全13巻〉中央公論社 1973-1974、新装版1988-1989

翻訳

  • 女の一生 モウパツサン 植竹書院 1913 のち角川文庫
  • ユーゴー物語 世界名著物語 実業之日本社 1914
  • 貧しき人々 ドストエフスキー 天弦堂 1915
  • トルストイ叢書 第6 コサック 新潮社 1917
  • トルストイ叢書 第8 クロイツエルソナタ・吹雪 新潮社 1917
  • ドストイェーフスキー全集 カラマゾフ家の兄弟 ドストイヱフスキー全集刊行会 1920-1921
  • 美貌の友 ベラミイ モウパッサン 天佑社 1922
  • サロメ ワイルド 文芸日本社 1925(世界文芸映画傑作集)
  • 貧しき人々 ドストイエフスキー 内外出版協会 1927
  • テス ハーデー 世界大衆文学全集 改造社 1930
  • 脂肪の塊 モオパツサン 新潮社 1938

関連人物

回想・伝記・研究

  • 広津桃子 『父広津和郎』毎日新聞社 1973年、中公文庫 1979年
  • 谷崎精二 『葛西善蔵と広津和郎』 春秋社、1972年
  • 松原新一 『怠惰の逆説 広津和郎の人生と文学』 講談社、1998年
  • 橋本迪夫 『広津和郎再考』 西田書店 1991年
  • 坂本育雄 『評伝広津和郎 真正リベラリストの生涯』 翰林書房 2001年 
  • 坂本育雄 『広津和郎研究』 翰林書房 2006年
  • 木下英夫『松川事件と広津和郎 裁判批判の論理と思想』 同時代社 2003年

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